その9:日本語の訳し方(2)

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

前回に引き続き日本語に訳すときの注意事項じゃ。語彙力を高めるのじゃよ!

5.soon

We will get in touch with you soon.

この英文を学生に訳してもらうと、「当社はすぐに貴社に連絡いたします。」と訳す学生がおります。

このsoonには、たしかに「すぐに」という意味がありますが、もし「すぐに」と言いたいのであれば、immediately, promptly, right awayなどの言い方をすることが多いです。したがって、相手がsoonを使ったのはなぜなのか、理由があると思います。

それは、「すぐに」ではなくて「近いうちに、そのうちに」という曖昧な意味で使うからではないでしょうか。

したがって、「当社は近いうちに貴社に連絡いたします。」と訳すのが穏当でしょう。

6.open an account

この表現は本来「(銀行)口座を開設する」という意味ですが、「取引を開始する」と訳されます。

口座を開設することが、どうして取引を開始する意味になるのか参考文献を当たっても、答えを見つけることはできませんでした。

このaccountとは「口座」ではなくて「取引勘定」のことと考えられ、「取引勘定を開設する、すなわち取引を開始する」と先達が訳したのではないかと思います。

7.distributor

貿易実務英語では、「販売店、販売業者」と訳されます。

以前、貿易実務検定試験でこの用語が出題されたことがありますが、「なぜそう訳すのか」と質問が寄せられたことがあります。質問をよく聞いたところ、その方が勤めている業界では「卸売業者」のことであることがわかりました。

分野によっては、そういう意味もあるかもしれませんが、この検定試験では貿易実務のことが問われます。多義語の場合には、どの分野や場面で使われるかにより、意味が決まってきます。

このdisbributorには「販売店、販売業者、卸売業者」のほかにも、「配給(業)者、分配器,散水装置」などの意味もありますが、貿易実務というコンテクスト(文脈)で読み取る必要があります。