その19:法的側面を考える(1)

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

貿易とは、売主と買主の間の国際商取引ですので、売買契約を交わすことになり、法的な実務知識も必要となります。

まず、用語の和訳問題をやってみることにします。

問題1 party

これは、パーティーのことではなくて、「当事者」と訳します。さらに、charter partyとなりますと、「用船契約(書)」という専門用語になります。

問題2 principal

学生たちにこの問題をやってもらうと、「主な」、「校長」という回答が多いです。たしかに、英和辞書にはそういう意味も載っていますが、貿易で「校長」はおかしいぞと気づくことが大切です。貿易では「本人」と訳し、agent(代理人)の対語となります。

問題3 shall

単純未来の「~でしょう」ではなくて、法的な義務を示す「~するものとする」と訳します。

以上の3語を用いて英文にしますと、

Both parties shall act as principals and not as agents.(両当事者は代理人としてではなく、本人として活動するものとする。)

したがいまして、これを「両当事者は代理人としてではなく、校長として活動するでしょう。」と訳しては誤りになってしまいます。このように、日常用いる単語でも、法的な顔(側面)がわからないと、見当違いな解釈になりかねません。法律の英語では、considerationは約因、instrumentは証券、prejudiceは損なうこと、など全く別の顔(側面)をみる思いがいたします。さらにnegotiationとは交渉という意味のほかに「(為替手形などの)買取、譲渡」になりますし、interestとは利害関係や利権のほかに、海上保険では「保険の目的」(subject matter of insurance)という意味になり、学校英語で習った意味からは想像もつきません。

検討違いな解釈にならんよう、今年もしっかり学習していくのじゃ!