その7:表現の形骸化

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

貿易実務英語では、次のような場面で多く使われる表現があります。

1.手紙やメールを受け取ったとき

Thank you for your letter of April 1.
4月1日付け貴信ありがとうございます。
Thank you for your e-mail inquiring about our new products.
当社新製品についてお問い合わせのメールありがとうございます。

このThank youとは、本来、お礼の表現であり、Thank you for your help.(助けていただきありがとう)やThank you for your souvenir.(お土産ありがとう)など、相手のしてくれた事や相手からもらった物に対して用いられます。

上記英文のように、手紙やメールに対してお礼を述べるのは、手紙やメールを受け取ったことを丁寧に表現する意味合いが大きいです。

2.通知するとき

We are pleased to inform you that your order has been shipped today.
ご注文品は本日船積されましたことをお知らせ申し上げます。
We are pleased to enclose our brochure and price list.
当社パンフレットと価格表を同封申し上げます。

このbe pleased toは、「喜んで~する」という意味でありますが、「喜んで」という意味が薄れ、「~する」ことを丁寧に表現しています。

3.返事を待つとき

We look forward to hearing from you soon.
近いうちにお返事いただけることをお待ちしております。
We look forward to your prompt reply.
迅速なご返事をお待ちしております。

これも、look forward to ~という「~を楽しみに待つ」の意味が薄れ、「待つ」ことを丁寧に表現しております。これらの表現は、定型表現として、本来の意味が薄れてしまい、表現が形骸化したといえるでしょう。

定形表現をどう解釈していくのか、それが英語を学ぶ鍵となってくるのじゃ!