その2:専門用語 vs 日常語

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

貿易実務での代表的な専門用語として、FOB(本船渡し)、L/C (信用状)、D/P(支払渡し)、Exclusive Selling Agent(一手販売代理店)、Force Majeure(不可抗力)、Vanning(コンテナ詰め)など、 さまざまな専門用語があり、貿易実務検定でも出題されております。

こうした用語は一見して専門用語とわかりますが、日常語でありながら専門語義を持つものもあります。

Billとは、日常的には請求書や紙幣の意味で使われますが、貿易では、為替手形(Bill of Exchange)のこととなります。

また、Draftも草稿をはじめいくつかの意味がありますが、貿易では、Billと同様に為替手形の意味で使われるほかに、海運では吃水(船の水面から没する部分の垂直距離)を指すことになります。

為替手形に関連し、Drawerという用語があり、引き出しのことではなく手形振出人のことになります。

こうした日常語の顔をした多義語の場合、使われるコンテクスト(文脈)によって意味が決まってきます。私が学生のとき、恩師から鳥類学者が話しているときは、Billは嘴のことになると聞いたことがあります。

私が英文指導を受けたことがあるアメリカ人の方から、英文にあったVessel(貿易では船のこと)の意味を尋ねられたことがあり、ネイティブであってもコンテクストがわからないと意味がわからないことになります。

貿易というコンテクストの中で、日常語の異なる顔を知ることができるというのは貿易実務英語学習の楽しみといえるでしょう。

貿易実務英語を学ぶということは、専門用語をしっかり理解することでもあるのじゃ!