その4:真の英語の達人とは

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

英語の達人は、幅広い英語力が求められるのじゃ!この機会に達人を目指そう!

英語の達人というと、当時ソニーの井深名誉会長専属の「英語屋さん」として活躍された浦出善文さんという方を思い出します。

ご著書である『「英語屋さん」が現場で学んだ国際業務ABC』によりますと、輸出業務や海外営業も経験されており、英語ができるだけではないことがわかります。

とくに、輸出業務では、P/O(購入注文書)、D/O(荷渡指図書)などの略語について、「貿易実務にはその種の略語が多く、その意味をしっかり勉強しないと仕事にならない」と述べています。

また、「周りが乙仲さんと言うのを聞いて、いったい誰のことかと思ったものだ」ともあります。この乙仲とは、昭和14年制定の海運組合法における乙種海運仲立人のことでありますが、同法は昭和22年に廃止されたものの、今日でも海貨業者の俗称として用いられています。

真の英語の達人とは、こうした方のように、英語だけができる人のことではなく、専門知識に裏付けられた英語で仕事ができる人のことであるといえるでしょう。貿易取引のように相手のある仕事では、さらに心理的側面も疎かにできません。相手がこちらからのメッセージをどう受け止め、どう反応するのか、思いを巡らすことも必要となります。例えば、We cannot allow the discount you asked for.(貴社がお求めの割引には応じられない)とネガティブにいってしまうよりも、条件次第では割引可能な場合、We will be pleased to allow you a 5% discount if you order 100 units or more.(100台以上ご注文していただければ5パーセントの割引をいたします)とポジティブにいったほうが相手に与える心理的効果が違ってくるからです。