その21:用語の日本語表記のゆらぎ

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

用語の日本語表記について、よく観察してみますと、同じ用語でも異なるものが見受けられます。

1. Mate’s Receipt (M/R)

本船貨物受取証のほかに、本船貨物受取書、本船受取証、本船受取書という表記もあります。つまり、「貨物」を入れているものと入れていないもの、「受取証」と「受取書」があります。「貨物を受け取ったことの証」として発行されるのですが、いずれも用いられているようです。

2. Air Waybill (AWB)

航空運送状と航空貨物運送状の二つの表記があります。

これも「貨物」を入れていると入れていないとの違いですが、航空運送状のほうが一般的と考えられます。と申しますのは、日本航空では航空貨物運送状という表記の用例があるのですが、同社の国際運送約款(貨物)には「航空運送状」と記載されているからです。ただし、税関では、輸入申告の際に必要な書類のなかで「航空貨物運送状」と表記しており、一筋縄では行かないようです。

3. Shipped B/L

船積式船荷証券のほかに、船積船荷証券、積込式船荷証券という表記もあります。Received B/Lの場合、(船積式船荷証券や積込式船荷証券に対し)受取式船荷証券、(船積船荷証券に対し)受取船荷証券の二つの表記があります。なお、国際海上物品運送法には船積船荷証券、受取船荷証券と記載されていますので、法律上はこの表記となります。

4. Less than Container Load (LCL) Cargo

LCL貨物のほかに、混載貨物、小口貨物、CFS貨物という表記もあります。1つのコンテナで満載できないため、他の荷主の貨物と混載することになる小口貨物のことなので、混載貨物あるいは小口貨物と表記したのでしょう。CFSとはContainer Freight Stationの略で、LCL貨物は荷捌きのためCFSに搬入されるのでCFS貨物とも呼ばれます。

5. Non-Vessel Operating Common Carrier (NVOCC)

利用運送事業者のほかに、国際複合輸送一貫業者、国際複合運送一貫事業者、国際複合運送一貫業者と微妙に異なる表記があるのみならず、非船舶運航業者とも呼ばれます。さらに、略語のままNVOCCとする表記もあります。

同じ用語であっても日本語表記は変わる場合もあるのじゃよ。